新型コロナ「経済対策」はこれが大正解! 消費減税も給付金もNGです

コロナウイルスの本格的な感染拡大を受けて、大型の景気対策を求める声が高まっている。日本経済はもともと消費が低迷しており、消費増税がこれに拍車をかけているが、WHO(世界保健機関)がパンデミック宣言を出したこともあり、大規模経済対策はほぼ必至の状況といってよい。今後の経済対策はどうあるべきなのか考察した。
現在の経済対策は、あくまで緊急支援
政府は2020年2月13日に緊急経済対策の第1弾を、続いて3月10日に第2弾を発表している。これらの施策は財政支出が約4500億円、金融措置が総額1.6兆円の規模となっており、それほど大きな経済対策とはいえない。内容も一斉休校に伴う生活者支援や中小企業の資金繰り対策が中心であり、あくまで緊急措置に限定されたものだ。
今回のような危機が発生すると、不安心理による信用収縮から、取引先への支払い停止などが発生する。また体力のない企業の場合、強制的な解雇や雇い止めなどを実施する可能性があり、労働者によっては今日、明日の支払いに困る事態も十分に考えられる。その点おいて、今回の措置は妥当な内容であり、それなりに評価してよいと筆者は考えている。
だが、一連の施策はあくまでも緊急措置に過ぎない。
感染症なのでいつかは感染が終息するはずだが、現時点において見通しは立っておらず、経済への影響が長期化する可能性も高まっている。そうなった場合、緊急支援とは別に、景気を底上げするための本格的な支援策が必要となってくる。
国会で予算を審議中ということもあり、政府の対応は鈍いというのが現実だが、与党内部でも大規模対策を求める声は高まっており、政府も何らかの対応を打ち出す必要に迫られるだろう。
では、これから議論される経済対策はどのような中身になるのだろうか。
政府が実施できる経済対策は、大きく分けて財政政策と金融政策の2種類がある。金融政策についてはアベノミクスにおける量的緩和策によってすでに実施済みだが、十分な効果を発揮しているとは言い難い。そもそも量的緩和策というのは、市場にインフレ期待を生じさせ、それによって実質金利(名目金利から期待インフレ率を引いたもの)を引き下げ、設備投資の拡大を促すものである。
日銀が緩和姿勢を明確にすれば株価には多少の効果があるかもしれないが、コロナショックによる不安心理から極端に需要が低下している今の状況を改善することは難しく、この先、国債の買い入れを増額したり、マイナス金利政策を深掘りしても、実体経済への効果は限定的だろう。そうなると、議論の中心となるのはやはり財政政策にならざるを得ない。
減税か財政出動か、それとも給付か?
財政政策には、政府が需要を直接、創出する財政出動と、消費者の可処分所得を増やし、消費者による支出拡大を促す減税という2つの方法がある(減税の変形版としては、現金などを直接、国民に給付して消費を促すという施策もあり得る)。
世論という部分に限定すれば、もっとも声が大きいのは消費減税である。10%に増税した消費税を再び8%に戻すというプランや、一部からは期間限定で消費税をゼロにするという大胆なプランも取り沙汰されている。本来、消費税というのは景気に影響を与えにくい税だが、日本の場合、あまりにも経済の基礎体力が落ちており、増税によって消費は壊滅的な打撃を受けている。
安倍政権は、日本経済が力強く成長していると説明してきたが、もしそれが本当なら消費増税で景気の腰が折れることはあり得ない。消費の低迷が消費税によるものだとすると、安倍政権のこれまでの説明が正しくないということになるし、消費税が低成長の原因ではない場合、景気の低迷には別の理由が存在することになる。
いずれにせよ、短期的な部分に着目すれば、2回の増税が消費に打撃を与えたことはほぼ明白であり、これを元に戻せば、その分だけ消費は回復する可能性が高い。だが減税策の最大の欠点は、減税前の状態に戻すことしかできないことと、再度増税する時のマイナスが極めて大きいことである。
給付も効果は限定的
日本経済には現実の経済環境と産業構造のミスマッチという構造的な問題が存在しており、これが賃金の低下と消費低迷をもたらしてきた。これは消費増税よりも前から起こっていることなので、増税そのものが景気低迷の根本原因ではない。したがって、仮に消費税を減税しても、当時の状況に戻すことしかできない可能性が高い。
しかも、コロナウイルスの感染拡大によって、日本の消費はさらに冷え込む可能性が高く、減税だけではプラス成長に持っていくまでの効果を発揮するのは難しいだろう。また、恒久的な減税にしない限りいつかは税率を引き上げることになるが、その時に十分に景気が回復していなければ、それこそ景気に対して致命的な打撃を与えてしまう。
消費減税は支出するお金を持っている人に限定した施策であり、支出が多い人ほど減税のメリットが大きくなる。逆に所得が極めて低い人や、コロナウイルスの影響で仕事を失い、所得そのものが消滅している人にとって消費減税はほとんど効果がない。また、いくら減税になったといっても、気分的にバンバン高額消費をする雰囲気にはなれないので、高額所得者の消費が低所得者にも波及するという、いわゆるトリクルダウン効果もあまり期待できないだろう。
こうしたことから、一部の論者は減税ではなく給付を強化すべきと主張している。
現金の給付は対象を選別できるので、所得を失った人たちの消費を喚起できるという点では、底上げ効果が期待できる。ただ、この施策についても、過去に実施したポイントのバラ撒き策などからも分かるように、短期的な効果しかなく、根本的な景気の底上げを期待することは難しい。
また、誰に給付するのかという部分についても、公平性という問題が生じかねない。仮に給付を実施する場合には、今回の感染拡大で大打撃を受けたフリーランスや失業者など、生活が困窮している人を主な対象とした方がよいだろう。
大幅の消費減税は、金利上昇リスクあり
一部には消費税率の大幅な引き下げや廃止を主張する声もあるが、この方策はかなりリスクが高い。財政に関する議論になると、どういうわけか皆、感情的になり「日本円が紙切れになる」「日本の財政は絶対に破綻しない」といった極論ばかりになってしまう。
現時点において、すぐに日本の財政が破綻すると考える専門家はほとんどいないが、仮に消費税を廃止し、その財源を国債でカバーした場合、近い将来、金利の上昇を招くと考える専門家はかなりの数にのぼるだろう。
日本政府は約1000兆円の債務を抱えているが、ほぼゼロ金利が続いていることから政府の利払い費は9兆円程度で済んでいる。だが、金利がわずか2%上昇しただけで、政府の利払い費は20兆円に急拡大する(デュレーションを考えると猶予期間は10年しかない)。
消費税を含めた日本の税収は60兆円弱しかなく、消費税を除くとわずか40兆円である。利払い費が20兆円になると税収の半分が利払いで吹き飛ぶことになり、政府は予算を組めなくなってしまう。
これでは、景気対策どころか、年金や医療、防衛費を維持することすらままならなくなり、政府は抜本的なリストラを余儀なくされる。
与野党から減税を求める声が大きくなっているにもかかわらず、麻生財務相が消費減税に否定的なコメントを出しているのは、財政破綻というよりも、金利上昇による予算制約を強く警戒しているからである。
アベノミクスがスタートした当初は、日銀がいくらでも国債を購入することで金利を抑えられるという論調が強かったが、今後も無制限に国債を購入して、低い金利を維持すればよいと考える楽観論者はもはや少数派だろう。そうなると、半永久的に金利を低く維持することは現実問題として難しくなりつつある。
もし消費税を廃止もしくは大幅減税を実施するのであれば、今後の金利政策と財政目標について、厳格なプランを構築する必要があり、極めて難易度が高い。すべての国民のコンセンサスを得た上で実行するのであればよいが、安易な決断は禁物だろう。
コロナ後を見据え、IT投資などを強化すべき
では、コロナ対策としては、どのような経済政策が有効だろうか。今は不安心理や行動制限から極端に需要が低迷しており、需要を喚起する政策が必要なのは間違いない。だが、外出の自粛など、人の行動そのものが停滞していることに加え、生産体制の縮小で供給制限も発生している。闇雲に財政出動を実施しても、それを実行できない、あるいは供給制限からインフレを誘発する可能性も否定できない(しかも今は不景気なので、スタグフレーションの可能性もある)。
そうなると、国内での感染が長引いても供給に影響しない分野への支出を強化し、観光やイベントなど、影響が長期化する可能性が高い業界に対しては、抜本的な戦略転換を促す支援を行う方がよい。
今回のコロナウイルスの感染拡大によって、全世界的にリモートワークやペーパーレス化、無人化の動きが加速すると予測する専門家は多い。逆に言えば、この分野で先行できた国は、コロナ後の世界経済において主導的な役割を果たすことができる。
政府が実施すべき経済対策は、コロナ後の世界を見据え、次の成長につながる分野への重点投資だろう。
短期的には需要の落ち込みをカバーし、中長期的にはコロナ後の成長のエンジンとして機能するよう、クラウドや自動運転といった先端分野への大胆な支出が必要である。
先ほど述べたように、日本の財政は限界に近い状況となっており、金利を抑制したまま大規模な国債増発が実施できるのは今回が最後かもしれない。政府の決断力が試されている。