北朝鮮はなぜ、厳しい制裁下でも「経済発展」しているのか

新しいライフスタイルが浸透中
チジミは客の前で焼いている。串焼き・餃子・コロッケなど30種類ほどの総菜がカウンターに並ぶ。ハンバーガーは3500北朝鮮ウォン。若い女性たちが、それを次々と買っていく。持ち帰る人もいるが、温めてもらってイートインスペースで食べる人も多い。
「こうした店が増えたことで、女性たちの家事がずいぶん楽になりました。トウガラシを使った辛い惣菜が人気で、1日に数百人の客が来ています。忙しい主婦が買いに来るので、こうした惣菜屋が増えているんです」
売り場の女性支配人はそう語る。
取材で訪れる個人宅では、出前で取った料理が出されることも普通になった。こうしたライフスタイルの大きな変化には、平壌を中心とした人々の生活に経済的なゆとりが生まれていることが見て取れる。
高額商品が並ぶ新店舗
そのことがより明確に表れているのが、次々とオープンしている高額商品を売る商業施設である。1986年開業の大聖(テソン)百貨店は、昨年4月にニューアルオープンした。
5階建てで、1階は食料品スーパー、2~3階では国産品と輸入品の高級な衣類・宝石・スポーツ用品・家電などを販売している。家電売り場には「パナソニック」「フィリップス」などの大型テレビが並ぶ。店内は明るくおしゃれで、商品の品ぞろえは豊富だ。
デザインの良い国産婦人靴は1700北朝鮮ウォンだったが、「パナソニック」の64インチテレビは26万9900北朝鮮ウォンである。
なお北朝鮮ウォンは、国定レートで1北朝鮮ウォン=約0.9円だが、市場レートでは0.013円と思われる。外国人が入ることができる商店の商品価格は、かつてはユーロ表示が多かったが、今ではほぼ北朝鮮ウォンに変わっている。
4階はレストランになっており、11時半に行ったみたら、平日だというのに席の確保が大変なほど混んでいた。トレーを持って朝鮮料理や洋食など好きなものを順に受け取り、最後に代金を支払う。こうした形式の店は、北朝鮮で初めて見た。大盛況なのは、料理がかなりうまいにもかかわらず低価格だからだろう。
2017年4月から7回訪れている咸鏡南道(ハムギョンナムド)咸興(ハムフン)市でも、電動自転車が急速に増えた。昨年7月に朝の通勤・通学時にホテル前で数えたところ、自転車の20台に1台が電動タイプだった。
そしてこの地方都市でも平壌と同じように、結婚式が派手になっている。新郎新婦は、ビデオと写真のカメラマンを連れて景勝地で時間をかけて撮影。スタイリストまで付いていて何度も衣装替えをする。
次にホテルの宴会場へ移動して披露宴である。それぞれの家で宴会をする伝統的な形よりも、この方が安いのだという。出席者は約80人で、豪華な料理が次々と出された。
また、かつては水さえ満足に出なかった古いホテルは、時間制限があるもののお湯が出て、売店には輸入ワインがたくさん並んでいた。地方都市でも、経済が上向きなのは確かだろう。